許可取消事例を読む
産業廃棄物処理業を営む処理業者にとって、処理業許可取り消しは経営の根本を揺るがす最も重大な行政処分である。また、排出事業者にとっても委託先の処理業者の許可が取り消された場合、代替の処理業者の選定などを行わなければならないため少なからず影響を受けることは避けられない。
ここでは、2018年10月~2019年9月までに行われた許可取り消し処分のうち、処分を行った自治体が詳細な理由を公表しているものを3件ピックアップして掲載した。
処理業者はもちろん、排出事業者にとっても廃棄物処理法の違反事例として参考になる事例である。
許可取り消し理由の内訳
- 過去1年間(2018年10月~2019年9月)の産業廃棄物処理業許可取消のうち、理由が明確なものを213件収集し、許可取り消しの理由により分類すると、その内訳は以下の通りであった。
- 許可取り消しの理由のうち最多のものは役員が欠格要件に該当したというものであるが、その内訳は道路交通法・廃掃法・刑法の違反によるものが8割以上を占めている。
処理業者の役員が酒気帯び運転等で禁固刑以上の判決を受けた場合、または廃棄物処理法や刑法の傷害罪等の特定の違法行為で罰金刑以上の判決を受けた場合、欠格要件に該当するため許可が取り消される。
役員の欠格要件以外では破産と廃棄物処理法(廃掃法)違反がほとんどであるが、今回はこのうち廃棄物処理法違反に着目し、3件の事例を取り上げる。
事例①:不法投棄
- 許可取消理由:収集運搬業務を委託された木くず、がれき類等の産業廃棄物を、飛散・流失等の防止措置をすることなく野ざらしの状態で堆積させたことは、不法投棄にあたる。
- ⇒この事例に限らず、産業廃棄物の不適正な保管により事業停止や許可取り消しの処分を受ける処理業者は少なくない。
たとえ自社の敷地内であっても、飛散・流出等の防止措置など適切な管理を行わず、あるいは囲い・掲示板の設置や屋外で容器を用いずに保管する際の高さ・勾配等の基準を守らずに産業廃棄物の野積みなどを行った場合、 保管基準違反にとどまらず、本件のように不法投棄と判断される可能性まである。
これは処理業者だけでなく排出事業者も同様であり、収集運搬業者に引き渡すまでの自社保管においても、保管基準の遵守が必要である。
事例②:再委託禁止違反
- 許可取消理由:排出事業者から産業廃棄物管理票の交付を受けずに、自社で処理することのできない廃蛍光管の引渡しを受け、自社の産業廃棄物として中間処理業者に処分委託した。
- ⇒この事例では、2つの点における法律違反が許可取り消しの理由として挙げられている。
・委託を受けた産業廃棄物を別の処理業者に再委託したこと。
・産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付を受けずに産業廃棄物の引渡しを受けたこと。
廃棄物処理法では、受託した廃棄物処理を再委託することは一般廃棄物では禁止、産業廃棄物においても制限されている。
産業廃棄物の処理を再委託する際には、あらかじめ排出事業者から書面による承諾を受けていることなどの条件を満たす必要がある。
また、一部自治体などでは再委託が認められるのは施設や車両の故障等により排出事業者から直接委託を受けていた処理業者が処理することができなくなった場合のみと指導される例もあり、注意が必要である。
事例③:無許可委託
- 許可取消理由:中間処理物を産業廃棄物処分業の許可を有しない者に販売したとする一方で売却代金を上回る運送費を同社に対し負担していた。このことは、運搬の名目で運搬者に引き受けさせるもので、結局は廃棄物の処分を委託することと同義であり、委託基準に違反する。
- ⇒不要物の売却価格に対し売却のための運搬費用が上回る、「逆有償取引」の事例。
このような取引の場合、たとえ当該不要物が売却可能であったとしても客観的には取引価値がないものと判断され、廃棄物に該当すると判断される可能性がある。
本件では中間処理物の購入者と運搬者が同一であり、実態としては購入者に対して費用を支払って中間処理物を引き渡している状態のため、実質的には中間処理物は有価物ではなく廃棄物に該当し、この取引は産業廃棄物処分委託にあたると判断された。
ここで取り上げた3件のうち、特に①・③は排出事業者にとっても全く同様に起こりえる内容を含んでいる。産業廃棄物処理業許可を取得している処理業者はもちろんのこと、排出事業者にとっても十分に注意したい事例である。